電流の向きと電子の向き、なぜ「逆」なのか


こんにちは、ボーノです。「電気回路の教科書」シリーズのEpisode 4、今回のテーマは「電流とは何か」「電流と電子はなぜ逆向きなのか」です。前回までで、回路が一周つながると電流が流れる、という話をしてきました。でも、その「電流」って、そもそも何が流れているのでしょうか。そして向きはどちらなのでしょうか。今回はそこに一歩ふみこみます。
はじめて聞くと「あれ?」と引っかかる、ちょっと不思議なポイントが出てきます。でも、理由がわかってしまえば、なんてことはありません。安心して読み進めてください。
この記事のねらい

- 電流とは何か — 1秒あたりに通り抜ける電気の「量」
- 電子とは何か — 金属の中で実際に動いている「粒」
- 電子と電流の向きが逆という「約束」 — 電子はマイナス → プラス、電流はプラス → マイナス
- なぜ逆のまま使うのか — 電子発見以前の歴史的経緯
最後には3問の確認テストもあります。
電流とは — 1秒あたりに通り抜ける電気の量

まずは、電流とは何かから見ていきましょう。
電流とは、導線や部品のある断面を、1秒あたりにどれだけの電荷 (=電気の量) が通り抜けるか、という「量」のことです。前回のEpisode 1で出てきた「電荷」(回路をぐるぐる巡るもの) を覚えていますか?電流は、その電荷が断面を1秒あたりに通る量を表しています。
イメージとしては、水道管の流れが近いです。蛇口をひねると、1秒あたりに通る水の量がふえますよね。あれと同じで、電流は「1秒あたりにどれだけの電気が通り抜けるか」を表しています。
電流の大きさには、アンペア (A) という単位を使います。ここでは、「アンペア」という呼び名だけ覚えておけば十分です。詳しい計算は、後の回でじっくり扱います。
電気を運ぶ粒 — それが「電子」

続いては、その電気を「何が運んでいるのか」という話です。
金属、たとえば銅でできた電線の中には、「電子」というとても小さな粒がたくさんあります。前回Episode 2で出てきた自由電子のことです。この電子こそが、金属の中で実際に動いて、電気を運んでいる主役です。
金属の中では、この電子が動くことで電気が運ばれていきます。そして、その電子が1秒あたりにどれだけ通り過ぎたか、それを電流という量で表しているわけです。
例えるなら、ベルトコンベヤの上を流れていく、同じ大きさの箱のようなものです。一つ一つの箱が電子で、1秒間に通り過ぎる箱が多いほど、通り抜ける電気の量、つまり電流が大きくなる、というイメージですね。
電子と電流は「別もの」
ここで一つだけ区別しておきたいのが、電子と電流は別ものだ、ということです。
| 電子 | 電流 | |
|---|---|---|
| 正体 | 電気を帯びた「粒」そのもの | その粒が1秒あたりにどれだけ通るかの「量」 |
| 例えると | ベルトコンベヤの上の「箱」 | 1秒間に通った箱の「数」 |
役割がちがう、と押さえておくと、この後がすっきりします。
電子と電流の向きは「逆」 — これが今回いちばんのポイント

それでは、今回いちばんのポイント、電子と電流の向きについてです。ここが、さきほど予告した「あれ?」と引っかかるところです。
電子の向き — マイナス極からプラス極へ
まず、電子が動く向きから見てみましょう。電池の二つの極を外側でつないでいる導線 (外部回路) では、電子はマイナス極から出て、プラス極へ向かって動いていきます。マイナスからプラスへ、ですね。
電流の向き — プラス極からマイナス極へ (=逆)
ところが、回路の計算で使う「電流の向き」は、その逆なんです。電流は、プラス極から出て、マイナス極へ向かう、と決められています。
- 電子: マイナス極 → プラス極 (= 実際に動いている向き)
- 電流: プラス極 → マイナス極 (= 計算で使う向き。逆)
実際に動いている電子はマイナスからプラスなのに、電流の向きはプラスからマイナス。ちょうど反対を向いているわけです。
なぜ逆なのか — それは「約束」
なぜこんなことになっているかというと、これは「プラスの電気が動くとしたら、どちら向きか」を基準にして、電流の向きを決めた、という昔からの「約束」だからなんです。
例えるなら、帳簿のつけ方に近いです。「マイナスの電荷が左へ動いた」という出来事を、「プラスの電荷が右へ動いた」と書くことに決めておく、というようなものですね。物理的に言えば、マイナスの電荷が左に動く現象は、プラスの電荷が右に動く電流としてそのまま表せるのです。実際に動くのは電子で左向きでも、向きの基準である電流は逆の右向き。でも、ルールさえ全体で統一しておけば、計算の答えはちゃんと合います。
ですから、向きが逆だと聞いても、心配いりません。基本的な回路の話は、「電流はプラスからマイナス」という約束で考えれば大丈夫です。


現場の豆知識 — なぜ「逆のまま」なのか

そもそも、どうして電子と電流の向きは、逆のままになっているのでしょうか。実はこれ、歴史的な順番のいたずらなんです。
電気の研究が始まったころは、まだ電子という粒は見つかっていませんでした。そのころに、電気のプラスとマイナスという呼び方が生まれて、「電気はプラスからマイナスへ流れる」という考え方をもとに、いろいろな計算や法則が作られていったんです。
ところが、あとから電子が発見されて、金属の中で実際に動いているのは、マイナスの電子で、しかも向きは逆だった、ということが分かりました。
では、向きを正しく直せばいいじゃないか、と思いますよね。ところが、向きの「約束」のほうは、そのまま一貫して使えば、ちゃんと正しい答えが出る、しっかり使える決まりなんです。今さら向きを入れかえても、得られるものはほとんどなく、世界中の教科書や図をそろえ直す手間と混乱が増えるだけ。だったらもう、最初の約束のまま使い続けよう、というわけですね。
確認テスト — 3問

- 第1問: 電流とは、電子がどれだけ速く走るか、という「速さ」のことだ。マルかバツか
- 第2問: 2本の電線アとイに、同じ1秒間で通った電子の数を比べました。アは6個、イは3個。電流が大きいのは、アとイ、どちらでしょうか
- 第3問: 電子は、マイナス極からプラス極へ動きます。では、回路で使う「電流の向き」は、プラスからマイナスで正しいでしょうか。正しいか、間違いか
確認テスト:解答
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| 問 | 答え | 解説 |
|---|---|---|
| 第1問 | バツ | 電流は「速さ」ではなく、1秒あたりに通り抜ける電気の「量」。電子の走る速さとは別ものです |
| 第2問 | ア | 電流は、1秒あたりに通る電子の数で決まります。同じ1秒間で、アは6個、イは3個。たくさん通ったアのほうが、電流は大きい |
| 第3問 | 正しい | 電流の向きは、プラスの電気を基準にした「約束」で、プラスからマイナス。実際に動く電子とは逆向きですが、この向きで計算すれば、ちゃんと答えは合います |
何問できましたか?特に第1問の「電流 = 速さ」という誤解と、第3問の「向きが逆」というポイントが、今回いちばん引っかかりやすいところです。間違えた場合は、関連する章を読み返してみてください。
このセクションのまとめ

- 電流とは、1秒あたりに通り抜ける電気の「量」(単位はアンペア)
- 電気を運んでいる主役は、マイナスの電気を帯びた電子という粒
- 外部回路では、電子はマイナス極からプラス極へ動く
- ところが、回路で使う電流の向きは、その逆のプラス極からマイナス極
- これは「プラスの電気が動くとしたら、どちら向きか」を基準にした歴史的な約束
- 向きは逆でも、全体で統一して使えば計算はちゃんと合う
こうしてみると、電流という「量」、電子という「粒」、向きの「約束」が、一本の筋でつながりますね。どれも回路を考えるうえでの土台になる話です。ぜひ頭の片隅に置いておいてください。
まとめ — 次回予告
今回は電流と電子の向きという、初心者がいちばん引っかかりやすいテーマをゼロから整理しました。次回は、もう一つの大事な概念「電圧とGND (グラウンド) の基準」に進みます。「0V (ゼロボルト) はどこなのか」「電圧はなぜ『基準』が必要なのか」を、ゼロから見ていきます。

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