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部品データシートの読み方
今回は、「電子工作初心者の方がつまづきがちな部品のデータシートの読み方」について、重要なポイントに絞って説明していきたいと思います。
今回はトランジスタを例に取っていますが、基本的には他の部品にも役立つ内容なので、今までデータシートの見方が分からなくて困っている方は是非この記事を参考にしてみて下さい。
データシートとは
初めに、そもそもデータシートとは何かという話をしていきます。
データシートとは家電で言うと説明書のようなもので、安全に動かすための使い方や注意点などが書いてあるドキュメントのことを言います。
基本的には1つの部品に1つのデータシートがあります。
データシートに記載されている項目は部品の種類によって様々で、1ページだけのシンプルなものから、CPUのデータシートのように数100ページにわたるものまであります。
また、記載する項目については特にルールがあるわけではなく、同じ種類・同じメーカの部品でも違いがある事がよくあります。
例えば、以下の画像はどちらもトランジスタのデータシートですが、このように共通している項目と異なっている項目があります。
これは、想定される用途が異なっていたり、アピールしたいポイントが異なるためです。
データシートに記載されている項目としては、主に5つのカテゴリに分かれます。
まず概要には部品の用途や強みが書かれています。
ここを読むと、その部品の特徴をある程度理解することができるので、最初に読むことをオススメします。
外形図にはパッケージ寸法やピン配置、重さなどが書かれています。
絶対最大定格は、一瞬でもこれ以上の使い方をすると壊れる可能性があるため、保証できないという値です。
電気的特性は、多くの場合、表とグラフに分かれています。
表は代表的なものをかいつまんだもの、グラフは更に詳細を知りたい人のために用意されたものです。
表は25℃、つまり室温で使用した場合の特性を載せるのが通例です。
また、最小・標準・最大値がありますが、以下のように全てに値が記載されているわけではありません。
多くの場合、使用する時に重要になるのは通常どのあたりかという点と、ワースト値がいくつかという2つの点なので、これに相当する箇所だけ値が入っています。
例えばコレクタ・エミッタ間飽和電圧という、トランジスタがONした時にコレクタ・エミッタ間にかかってしまう電圧であれば、通常は0.1V付近、どれだけ大きくても0.25Vであるということを意味しています。
なお、量産用の製品では素子ばらつきや環境ばらつきが非常に重要なので、グラフまで目を通す場合が多いのですが、個人用途であれば基本的には表だけ理解しておけば困ることは少ないと思います。
最後に注意事項ですが、ここには免責事項や権利のことなど、実は結構重たい内容が書かれています。
トランジスタを使う際に押さえておくべきポイント
次に、数ある項目の中から、トランジスタを使う際に必ず抑えておきたいポイントを3つ紹介します。
- ピン配置
- 絶対最大定格
- hFE
データシートにはたくさんの記載がありますが、多くの場合は、ひとまずここで紹介する3つだけ確認すれば実用上困ることはほとんどないと思います。
抵抗やコイルのような部品はどちら向きに使っても問題ないのですが、トランジスタのような多くの半導体部品には向きがあるので、使うときは必ずピン配置を確認する必要があります。
なおトランジスタの向きはパッケージの種類にもよりますが、このTO-92という丸型のタイプだと印字面を上向きにして下から覗き込んだ時に、左からエミッタ、コレクタ、ベースに並んでいます。
次に重要なのは、絶対最大定格です。
壊さないための情報なので正直全て大事ではあるのですが、特に実使用上で注意すべきなのは以下の画像にある3つです。
1つ目はエミッタとコレクタ間にかけて良い電圧で、この部品の場合は50Vなので例えばAのような回路はOK、BはNGになります。
2つ目はコレクタに流して良い電流で、この場合は150mAなのでAはOK、BはNGになります。
3つ目はコレクタ損失で、これはコレクタ電流とコレクタエミッタ電圧の掛け算で計算することができます。
この部品は400mWなので、AはOK、BはNGです。
なお、部品によってはコレクタ損失ではなくて全損失という書き方をしている部品もあります。
ですがこれはベース側の損失を入れるか入れないかの違いであり、そっちは無視できるほど小さいのでコレクタ損失と全損失ほぼイコールであると考えて問題ありません。
最後に重要なのは、hFEです。
hFEはトランジスタの性能を表す指標で、このようにベース電流とコレクタ電流の比率を表しており、数値が高いほどスペックが高いことを意味しています。
トランジスタはこの動画でも説明したようにスイッチの役割を持っていますが、スイッチをONすれば無限に電流が流せるのではなく、 実はベース電流の大きさによって流せる電流に制限があります。
それを表すのがhFEであり、例えばhFEが100の場合は、ベース電流を1mA流せばコレクタ電流は最大100mAまで流せ、hFEが300の場合は最大300mAまで流せるということになります。
ランクは型名や印字面に記載されており、今持っている部品はGRランクなので、最小200〜最大400の範囲のどれかということを表しています。
hFEは、マイコンボードのような出力電流の小さいものからベース電流を流し、モータのような大きなコレクタ電流を必要とする場合にネックになるので、そのような用途の場合はデータシートをちゃんと確認しましょう。
ここで紹介した以外の項目については、ほとんど気にしなくても大丈夫だと思います。
基板にきちんと実装さえできていれば、基板を伝って熱が逃げてくれます。
また、トランジション周波数やコレクタ出力容量はよっぽど高周波で動作させる場合でなければ無視して大丈夫です。
データシートを読むときの注意点
最後に、データシートを読む際の注意点について2つ説明します。
一つは周囲温度による特性の変化です。
電気的特性の表に書かれている数値はあくまで室温の時の特性なので、発熱したりして周囲温度が上がると特性が変わる場合があります。
例えば以下の図のグラフは、許容されるコレクタ損失の温度による変化を表したものです。
25℃で使用している時は最大定格にも記載されていた通り400mWまでは持ちこたえることができるのですが、75℃で使用した場合は実は200mWまでしか耐えることができません。
次に、測定条件についてです。
電気的特性の表やグラフには、必ず測定条件が一緒に書かれています。
これは、測定条件によって結果が変わってくるからです。
例えばコレクタ・エミッタ間飽和電圧は表を見ると標準で0.1Vとありますが、これはあくまでコレクタ電流Icが100mA、ベース電流Ibが10mAの時に限った話です。
以下のグラフはコレクタ電流とベース電流の比が10の時のコレクタ・エミッタ間飽和電圧を示したものであり、以下の図を見てみると、コレクタ電流が100mAかつベース電流10mAの時は0.1Vくらいの電圧ですが、コレクタ電流が10mAかつベース電流が1mAの時は0.04Vというように、大きく値が異なっているのが分かると思います。
ということで、表の値だけを鵜呑みにせず、詳細な設計をするときは測定条件にも気を配りましょう。
まとめ
今回は、電子工作初心者の方がつまずきがちな部品シートの読み方について、重要なポイントに絞って説明をしてきました。
ここで話したことを頭に入れていくつかデータシートを眺めてみると、部品やメーカーごとに微妙な違いがあって面白いと思います。
もし時間があったら見てみてはいかがでしょうか。
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