【電子工作基礎編】マイコンボードの電源ピンから学ぶ2つの電源方式|LTspiceで始める実用電子回路入門

YouTube

目次
0:00 オープニング
0:22 電源ピンとは
1:20 2種類の電源の特徴
3:14 実機デモ
4:13 ワンポイントアドバイス
4:38 まとめ

マイコンボードの電源ピンから学ぶ2つの電源方式|LTspiceで始める実用電子回路入門

電源方式の特徴をよく知らないから、詳しくなりたいなぁ。

それならマイコンボードの電源ピンの中身を題材に説明していくね!

今回は電源方式についてさらに学びたい方のために、「マイコンボードの電源ピンから学ぶ2つの電源方式」というテーマで話をしていきます。

この記事を読めば、リニア方式やスイッチング方式の特徴についての理解も深まりますので、ぜひ最後までご覧下さい。

電源ピンとは

それではまず、電源ピンについて簡単に説明しておきます。

ここで電源ピンと呼んでいるのは、マイコンボードの入出力ピンの中にある、5Vや3.3Vといった電源を供給するピンの事です。
例えばAruinoでは、以下の画像の〇で示した部分がピンになります。

Aruino

マイコンボードは以下のようにいくつも種類がありますが、基本構成としてはどれも同じです。

マイコンボード

まずマイコンボードにはUSB経由で5Vが供給され、5Vピンからそのまま出力しています。
また3.3Vピンに対しては、電圧変換部を介して5Vから作られた3.3Vが出力されています。

電源ピンとは

ここで言う電圧変換部は、専門的にはDCDCコンバータと呼びます。

DCDCとは、「直流の電圧から別の直流の電圧へ変換する」という意味です。

DCDCとは

2つの電源方式

実はDCDCコンバータの方式には、リニア方式とスイッチング方式の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

DCDCコンバータの方式

特徴を理解しておくと、より安全に使いこなす事ができるのでぜひここで押さえておいて下さい!

それでは、2つの電源方式について紹介していきます。

リニア方式

1つ目の電源方式は、「リニア方式」です。

リニア方式とは
負荷に直列に可変抵抗を接続し、抵抗の大きさを調整する事で欲しい電圧を出力する方式。(※下記画像参照)

リニア方式とは

上記レギュレータの動作や使い方は非常にシンプルで、部品の端子が3つしかない事から「三端子レギュレータ」とも呼ばれます。

また電圧変動を調整する時間的なループが非常に早いので、電圧が安定しやすいというメリットもあります。

電圧が安定しやすいというメリット

一方でリニアレギュレータという物もあり、以下の図のように、電力を熱に変換してエネルギーを放出する事で電圧を調整しています。

リニアレギュレータ

そのため、発熱しやすく大きな電流が流せないというデメリットがあります。

発熱しやすく大きな電流が流せないというデメリット

リニア方式をまとめると、以下のようになります。

リニア方式のメリット
  • 動作がシンプルで使いやすい
  • 電圧変動が小さい
リニア方式のデメリット
  • 消費電力が大きい

スイッチング方式

2つ目の電源方式は、「スイッチング方式」です。

スイッチング方式とは
スイッチを使って電圧を調整する方式。(下記画像参照)

スイッチング方式とは

リニア方式と比べると動作がやや複雑ですが、簡単に言うとスイッチがオンの時にエネルギーをコンデンサに蓄え、オフの時に放出する事で電圧を調整しています。

出力電圧の大きさは、このオン・オフの時間比率で変える事ができます。

出力電圧の大きさ

スイッチング方式はリニア方式と違い、エネルギーの消費ではなくエネルギーの形を変える事で電圧を変換しているため、消費電力が低いというメリットがあります。

一方で部品点数が多く必要であったり、電圧変動が大きいといったところがデメリットです。

スイッチング方式のデメリット

スイッチング方式をまとめると、以下のようになります。

スイッチング方式のメリット
  • 消費電力が小さい
スイッチング方式のデメリット
  • 部品点数が多い
  • 電圧変動が大きい

リニア方式とスイッチング方式の違いが分かったところで、世の中にあるマイコンボードはどちらを使っているのかを見てみましょう!

以下の画像は最近人気のあるマイコンボードの3.3V出力が、どのように作られているかをまとめた表です。

マイコンボードごとの違い

POINT
結論として、用途が限られていたり小型化を重視しているものはリニア方式、用途や機能の豊富さをアピールしているボードはスイッチング方式が採用されているようです。

このようにどちらの方式も世の中には普及していて、適材適所で使い分けられています。

これらの2つの方式の最大の違いは、消費電力の大きさです。

2つの方式の最大の違いは、消費電力の大きさ

そこで最後に、負荷をつなげてそれぞれの方式で実際に熱がどの程度異なるのか見てみましょう。

ここでは代表として、microbitとM5Stack BASICのマイコンボードの3.3V電源ピンを使いました

microbitとM5Stack BASICのマイコンボードの3.3V電源ピン

負荷としては、加湿器で良く使われる超音波噴霧モジュールが負荷の大きさとして丁度よかったので、こちらを繋いで温度をモニターしてみました。

加湿器で良く使われる超音波噴霧モジュール

なお、超音波噴霧モジュールの負荷は抵抗値換算で大体5〜10Ω程度だと考えてください。

まずリニア方式のmicrobitを繋いでみると、このように温度がかなり高くなってしまいました。

リニア方式

一方でスイッチング方式のM5Stackでは、やはり温度はかなり抑えられている事が確認できました。

スイッチング方式

という事で、マイコンボードの電源ピンを題材にして、2つの電源方式と特徴について紹介しました。

なお実際に電力値としてどの程度違いがあるかは、CQ出版のメルマガの方で解説しているので、続きはそちらをご覧ください。

ワンポイントアドバイス

なお、最後に一点だけアドバイスをしておきます。

今回はデモ用に接続しましたが、基本的にマイコンボードは大きな電流を供給する事は想定されていないため、モータや超音波噴霧モジュールのような大きな負荷は繋げない方が無難です。

これらの部品を使いたい時は、電源アダプタやニカド電池等、大電流に対応した電源を使用するようにしましょう!

まとめ

今回はマイコンボードの電源ピンの中身を大解剖してみました。
LTspiceを使うと、簡単に動作や消費電力をシミュレーションできるので、「モノを動かすのが怖い」という方は、そちらも活用して下さい。

他にも電子工作初心者が最低限身につけるべき知識やツールの解説など、電子工作をゼロから体系的に学べる動画や記事を投稿しています。

これから電子工作を始める方は、他の記事や動画もぜひチェックしてみて下さい!