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マイコンボードの電源ピンから学ぶ2つの電源方式|LTspiceで始める実用電子回路入門
今回は電源方式についてさらに学びたい方のために、「マイコンボードの電源ピンから学ぶ2つの電源方式」というテーマで話をしていきます。
この記事を読めば、リニア方式やスイッチング方式の特徴についての理解も深まりますので、ぜひ最後までご覧下さい。
電源ピンとは
それではまず、電源ピンについて簡単に説明しておきます。
ここで電源ピンと呼んでいるのは、マイコンボードの入出力ピンの中にある、5Vや3.3Vといった電源を供給するピンの事です。
例えばAruinoでは、以下の画像の〇で示した部分がピンになります。
マイコンボードは以下のようにいくつも種類がありますが、基本構成としてはどれも同じです。
まずマイコンボードにはUSB経由で5Vが供給され、5Vピンからそのまま出力しています。
また3.3Vピンに対しては、電圧変換部を介して5Vから作られた3.3Vが出力されています。
ここで言う電圧変換部は、専門的にはDCDCコンバータと呼びます。
2つの電源方式
実はDCDCコンバータの方式には、リニア方式とスイッチング方式の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
それでは、2つの電源方式について紹介していきます。
リニア方式
1つ目の電源方式は、「リニア方式」です。
上記レギュレータの動作や使い方は非常にシンプルで、部品の端子が3つしかない事から「三端子レギュレータ」とも呼ばれます。
また電圧変動を調整する時間的なループが非常に早いので、電圧が安定しやすいというメリットもあります。
一方でリニアレギュレータという物もあり、以下の図のように、電力を熱に変換してエネルギーを放出する事で電圧を調整しています。
そのため、発熱しやすく大きな電流が流せないというデメリットがあります。
リニア方式をまとめると、以下のようになります。
- 動作がシンプルで使いやすい
- 電圧変動が小さい
- 消費電力が大きい
スイッチング方式
2つ目の電源方式は、「スイッチング方式」です。
リニア方式と比べると動作がやや複雑ですが、簡単に言うとスイッチがオンの時にエネルギーをコンデンサに蓄え、オフの時に放出する事で電圧を調整しています。
出力電圧の大きさは、このオン・オフの時間比率で変える事ができます。
スイッチング方式はリニア方式と違い、エネルギーの消費ではなくエネルギーの形を変える事で電圧を変換しているため、消費電力が低いというメリットがあります。
一方で部品点数が多く必要であったり、電圧変動が大きいといったところがデメリットです。
スイッチング方式をまとめると、以下のようになります。
- 消費電力が小さい
- 部品点数が多い
- 電圧変動が大きい
以下の画像は最近人気のあるマイコンボードの3.3V出力が、どのように作られているかをまとめた表です。
このようにどちらの方式も世の中には普及していて、適材適所で使い分けられています。
これらの2つの方式の最大の違いは、消費電力の大きさです。
そこで最後に、負荷をつなげてそれぞれの方式で実際に熱がどの程度異なるのか見てみましょう。
負荷としては、加湿器で良く使われる超音波噴霧モジュールが負荷の大きさとして丁度よかったので、こちらを繋いで温度をモニターしてみました。
なお、超音波噴霧モジュールの負荷は抵抗値換算で大体5〜10Ω程度だと考えてください。
まずリニア方式のmicrobitを繋いでみると、このように温度がかなり高くなってしまいました。
一方でスイッチング方式のM5Stackでは、やはり温度はかなり抑えられている事が確認できました。
という事で、マイコンボードの電源ピンを題材にして、2つの電源方式と特徴について紹介しました。
なお実際に電力値としてどの程度違いがあるかは、CQ出版のメルマガの方で解説しているので、続きはそちらをご覧ください。
ワンポイントアドバイス
なお、最後に一点だけアドバイスをしておきます。
今回はデモ用に接続しましたが、基本的にマイコンボードは大きな電流を供給する事は想定されていないため、モータや超音波噴霧モジュールのような大きな負荷は繋げない方が無難です。
まとめ
今回はマイコンボードの電源ピンの中身を大解剖してみました。
LTspiceを使うと、簡単に動作や消費電力をシミュレーションできるので、「モノを動かすのが怖い」という方は、そちらも活用して下さい。