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歴史で学ぶ電源方式
今回はリニア方式とスイッチング方式のそれぞれの特徴を理解したい方のために、「歴史から学ぶ電源」というテーマで話をしていきます。
実は今普及している電源の開発にはアポロ計画が絡んでいたり、面白い時代背景があります。
この記事を最後まで読むと、リニア方式とスイッチング方式を場面によって使い分けられるようになるので是非最後までご覧ください。
1950年代
電源というのは、大きく分けるとリニア方式とスイッチング方式の2つがあります。
しかし遡ること1950年代、元々世の中にはリニア方式の電源しか存在しませんでした。
リニア方式の電源は、ACコンセントを入力とした場合、以下の図のような回路になっています。
リニア方式の流れを以下で説明します。
リニア方式は回路が簡単な上に難しい制御も不要なので、広く普及していました。
ただこの回路には、2つの欠点があります。
- ACの入力を直接トランスに接続している
- エネルギーの消耗が激しい
1つ目は、ACの入力を直接トランスに接続している点です。
ACは50Hzや60Hzなど、比較的低い周波数の交流です。
トランスは電流を流し続けると、コアが磁気飽和してしまい使い物にならなくなるので、飽和しないようにコアの断面積やターン数を増やす必要があります。
そして2つ目は、リニア方式はエネルギーを熱に変える事で電圧を変換する方式だったので、変換効率が悪く、多くのエネルギーを消耗してしまうという点です。
という事で、リニア方式は小型化・省エネという課題がありました。
1960年代
そんな中1960年代になると、宇宙開発が活発になりNASAのアポロ計画が始まったのです。
アポロ計画では、ロケットに積まれた限られたエネルギーを使って月に行かなくてはいけないので、小型で変換効率の良い電源が求められていました。
そこで開発されたのが、スイッチング方式という全く新しい方式の電源です。
スイッチング方式の電源は以下の図のような構成となっており、リニア方式と以下の2つの点で異なっています。
- AC入力を一旦整流平滑して直流に変換している点
- スイッチング素子を使って直流から高周波の交流を作って電圧を変換している点
この方式のメリットとしては、トランスを高周波で動作させる事で小型化できる事が挙げられます。
またリニア方式のように熱に変える事ではなく、磁気エネルギーの形を変える事で電圧変換を行なっているため、変換効率も良い回路になっています。
一方でこの方式では、スイッチングを高速に行う必要があるので、応答性の良いスイッチング素子や複雑な制御ができる部品が必須になります。
そんな中この時代になると、従来の真空管と比べて反応速度の速いトランジスタやICが普及してきました。
民生機器への応用
そしてこのスイッチング方式は少しずつ民生機器にも取り入れられ、かなり一般的になってきました。
このACアダプタはリニア方式であり、昔はたった8.5Wの電力を供給するのに400g近くの重さがありました。
しかし今は以下のスイッチのACアダプタのように、39Wの電力を供給するスペックがあるのに、重さはわずか120gしかありません。
分解して確認した結果、このACアダプタにはやはりスイッチング方式が使われていました。
このようにスイッチング方式ではかなり小型・軽量化ができるという事が分かって頂けたかと思います。
まとめ
今回は「歴史から学ぶ電源」というテーマで話をしてきました。
注意としてはここではスイッチング方式が歴史には新しい方式であるという話をしましたが、どちらも一長一短があり、全てが置き換わったというわけではありません。
ただ時代背景を知ったことで、どんな時にどっちの方式がいいのかという点が考えやすくなったかと思います。
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